同位体環境学がえがく世界

同位体を使って
みんなで行っていること

フィリピン、シラン・サンタローザ、
上流・下流のみんなで守る水のつながり
ー地下水の窒素汚染の「見える化」を契機としてー

フィリピンのラグナ湖のシラン・サンタローザ流域は、経済開発によって、下流域の河川環境の悪化と生物多様性の低下が深刻です。一方、上流域~中流域の一部では、川が遊びの場であり生活の場として利用する集落もあります。住民への聞き取り調査から、この流域では、水資源を全て地下水に依存しており、人々の地下水汚染・枯渇の問題への関心が高い事がわかりました。

住民の多くは現在も地下水を飲用しています。総合地球環境学研究所の栄養循環プロジェクトでは、シラン・サンタローザ地域の地下水を採取し、汚染の程度を調べるために重金属や硝酸イオンの調査のほか、汚染源を特定するために、同位体分析を行いました。

採取した水は日本に持ち帰り、地下水の中に有害な元素が含まれていないのかを調べました。また、地下水に含まれる窒素の起源を調べるために、硝酸イオンの安定同位体比を分析しました。結果、地下水には有害な重金属などの元素の汚染は無いことがわかりましたが、窒素汚染の場所がある事がわかりました。さらに、安定同位体比の情報から、窒素の起源は、流域の上流~中流で農業の肥料由来、中流~下流で有機質肥料と排水に由来することがわかりました。

栄養循環プロジェクトは現地の方々と協働で、これらの研究結果を地域の人と共有する発表する場「流域フォーラム」を開催し、多くの人が集まりました。参加者どうしでの議論、科学的知見の共有や、流域の上流から下流までの水のつながり[A water journey](Youtubeのリンクはこちら)の映像鑑賞を通して、人や流域の繋がりを実感。このフォーラムをきっかけに、行政に向けて「水管理の仕組み、制度」の要求がなされました。

©あるがゆう

総合地球環境学研究所 栄養循環プロジェクト(2013年~2020年)

フィリピンのラグナ湖のシラン・サンタローザ流域は、急速な経済成長と人口増加が起こっており、経済開発によって下流域の河川環境の悪化と生物多様性の低下が深刻です。
一方で、上流域~中流域の一部では、川が遊びの場であり生活の場として利用している集落もあります。この流域では、水資源を全て地下水に依存しており、人々の地下水汚染・枯渇の問題への関心が高い事がわかりました。
総合地球環境学研究所の栄養循環プロジェクトでは、シラン・サンタローザ地域の地下水を採取し、汚染の程度を調べるために重金属や硝酸イオンの調査のほか、汚染源を特定するために、硝酸イオンの窒素・酸素安定同位体分析を行いました。
その結果、地下水には有害な重金属などの元素の汚染は無いことがわかりましたが、硝酸態窒素の汚染がされている場所がある事がわかりました。
栄養循環プロジェクトは現地の方々と協働で、これらの研究結果を地域の人と共有する発表する場「流域フォーラム」を開催し、このフォーラムをきっかけに、行政に向けて「水管理の仕組み、制度」の要求がなされました。

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