同位体環境学がえがく世界

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滋賀県野洲川流域「野洲川のリンはどこからきているの?」

総合地球環境学研究所 栄養循環プロジェクト 2013年~2020年

リン(元素記号P)は生き物に欠かせない栄養元素のひとつです。一方、人間活動によってリンが大量に河川に流出すると、富栄養化や赤潮、アオコの原因になることがあります。富栄養化や水質悪化などの問題を解決するためには、河川へのリン起源を特定する必要があります。

近年、リン酸を構成する酸素の同位体比を調べることで、河川のリン起源を推定できる可能性が提案されています。この方法を使って、琵琶湖に流入する最長河川の野洲川を対象に、リンの起源を調査することにしました。

調査では、野洲川全域から20~40リットルの水を採取します。その合計は、800リットル以上になり、
その水をろ過したり濃縮したりする作業で研究者も一苦労。一つ20kgのタンクを何回も持ち運び、体がおかしくなるかと思いました。さらに、リン起源の候補となる試料(下水処理水、水田土壌、森林土壌、岩石、肥料)も採取して、すべての試料の実験処理にさらに1年以上が必要でした。

結果として、琵琶湖に流れ込む野洲川におけるリンの起源は、上流では主に岩石由来、中流では主に水田由来であることが判明しました。この評価方法によって、流域の水質改善策を考えるうえで、どの起源に重点的に対策を施せばいいのかを知ることができるということを世界で初めて示すこができました。

©あるがゆう

リンは、生き物に欠かせない栄養元素のひとつです。しかし、人間活動によってリンが大量に河川に流出すると、富栄養化や赤潮、アオコの原因になることがあります。
富栄養化や水質悪化などの問題を解決するためには、河川へのリン起源を特定する必要があります。
総合地球環境学研究所の栄養循環プロジェクトでは、琵琶湖に流入する最長河川の野洲川を対象に、リン酸を構成する酸素の同位体比(リン酸酸素同位体)を調べることで、野洲川のリンの起源を調査しました。
その結果、琵琶湖に流れ込む野洲川におけるリンの起源は、上流では主に岩石由来、中流では主に水田由来であることが判明しました。
この評価方法によって、流域の水質改善策を考えるうえで、どの起源に重点的に対策を施せばいいのかを知ることができるということを世界で初めて示すこができました。

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