同位体環境学がえがく世界

同位体でわかること

高山サバイバル術ーハイマツの霧を使った生き方ー

霞を食べて生きていく、という表現がありますが、霧の発生頻度が高い日本の高山帯では、霧を水資源として利用している植物も多いと考えられます。ハイマツ(Pinus pumila)は日本の中部山岳を分布の南限とし、高山の森林限界上部に優占することの多い針葉樹で、樹高は低いものの、オオシラビソやトドマツなどの高木になる針葉樹と同程度の光合成生産を行っています。富山県立山のハイマツ林で、光合成に伴う蒸散に必要な水のうち、霧水がどの程度貢献しているのかを、雨水や霧水(H2O)の水素(H)と酸素(O)の安定同位体比を利用して推定しました。その結果、ハイマツ林床に供給される水の半分近くは、ハイマツが針葉を使って集めた霧水であることが分かりました。

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